今が幸せでも過去を振り返ってしまうのは、
そこから得たものが大きかったから。
あれはまだ六歳だった。
八歳のビアンカとボロンゴを助けるために夜のレヌール城へと入った。
そこで味わえたちょっとしたスリルと緊張。
それから一ヶ月か二ヶ月か。
さらわれたヘンリーを助けにボロンゴと二人で入った太古の遺跡。
そこで起きた、父の死。
世界を失って、耐え切れない悲しみが自分の中でいっぱいになった。
奴隷生活当初、廃人になりかけた僕を淵から救ってくれたヘンリー。
たくさんの境遇に至った人達が、子供の僕を慰めてくれた。
みんなの結束、ヘンリーとの友情。十年間は、ただただそのおかげ。
鮮明に覚えてる。最初に仲間になったスラリン。
奴隷生活から開放され、流れ着いた修道院から少し離れて外を歩いてみると、
怪我をしているスラリンに出会ったんだ。目の近くを損傷していて目を開けにくい状況だった。
僕はゲマのことなんか忘れてスラリンの治療をした。
種族の壁は破れる。
偽の太閤を倒しラインハット復旧と共にヘンリーがマリアさんと結婚することになった。
心からの喜びを久しぶりに感じれた。
それと親友と一緒に旅が出来なくなる、少しの寂しさ。
その後ビアンカとまた出会った。
山奥で父を看病してひっそりと暮らしていた。美人に拍車が掛かっていた。
でも、そんなことで結婚を選んだんじゃない。
レヌール城の跡も十年の奴隷の中でもビアンカのことが気になっていた。
ビアンカも、僕のことを気に掛けてたらしい。
それからしばらくして結婚した。
自分が生きてて良かった。心底そう思えた瞬間だった。
グランバニア。サンチョとの再会。王位の継承。
そしてビアンカのお腹にいる赤ん坊。
生まれるまでそわそわして落ち着かなかった。ちょっと男の無力さを呪った。
高らかに響いた産声が耳に入ると、我慢が出来なくなって日安価の元へ走ったのを覚えている。
人は生まれた瞬間は可愛くないって聞くけど、それは違う。
実に可愛い双子に、二人で相談して兄を“クロス”、妹を“セルジュ”と名付けた。
でもその日にビアンカが魔物にさらわれた。
不安と孤独、魔物への憤りを背負ってでのデモンズタワー。
そこで出くわした恨むべき相手、ジャミ。
そいつに石にされた八年間。
自然と人間が忘れかけていた生物の鼓動、時の感覚について考えることが出来た。
だけど八年は長く短く、そして長かった。
クロスとセルジュとの再会を果たし、お父さんとの最初で最後の再会を通じ、ビアンカとの再会をした。
人がいて初めて感じられる温かさを心底感じ、自分や全ての人を大切にしようと思った。
そして知った魔界の存在。お母さん、マーサの居場所。
今思うと何秒見詰め合えた?一秒あっただろうか。
探し探したお母さん、出会ったその場が永遠の別れになってしまった。
でもお父さんと一緒に逝けてとても幸せそうだった。
僕はまだ逝けない。二人の幸せの姿を見た瞬間――多少だけ付いていきたいという気持ちがあったけれど。
あの時、後ろを振り返ればビアンカや子供達がいた。
今ある幸せを噛み締めて堪えて、自分が護り抜かなくちゃと思ったから。
魔王、魔界の神と捧げられているミルドラースとの一戦。
今までの結晶を最大限に出して、仲間と一緒に戦った。
永久だと思うようなときの中の苦杯戦いだったけどそれもやっぱり永遠ではなく、
今終わってここにいる。
全てが終わってここにいる。
グランバニアに自分の場所を持っている。
――
Q,Are you happy?
A,happiness to me now.
ドラクエの最後のSSだ!とはりきってドラクエⅤをやったことある方専用っぽくなってしまいましたね。
私の好きなドラクエⅤを端折り気味にまとめたものです。
エル(主人公)視点で、三人目の子供を育てる上でその前に保育日誌の最初のページでしょうか。ほとんど殴り書きです。
こうやってみると主人公って凄い人生を送ってますね・・・