許せない者がここにいる。
あれから二度と憎む以外の感情を持たなかった、あたしをこんな思いにさせたあいつがいる。
それに今はミネアとの2人だけじゃない。導かれし者が、八人集まってる。
悪の手先なんかにあたし達は絶対負けない!ミネアも同じ気持ちだったろう。
そして、アリーナやクリや爺さんも・・・三人の気持ちを考えると・・・ここは絶対に倒さなければいけない執念場だった。
「メラメラ・・・ここはバルザックの城なり」
「何を言ってるの!ここはお父様の城でしょ?!」
アリーナが歯を食いしばりながら、人魂みたいなのに襲い掛かった。鉄の爪が襲いかかろうとした――宙を掠めただけ。
この世に存在しないものなのだと、あたしはすぐに理解できたよ。だから攻撃が効くはずもない。向こうも害あることはしてこない。
多分、アリーナだってそんなの理解できてる。でもやらずにはいられないんだ。
機械的な声を発する人魂っぽいのに何度も鉄の爪が食い込み、それでも当たった感じはなく。もちろん、意味ないわ。意味ないわよ。虚しいだけよ。皆わかってる。
「このっ。ここはお父様の城!サントハイムの城なのに・・・」
クリだってわかってる。でも見てるだけ。爺さんも、悲しい顔してる。
トルネコだってライアンだってミネアだってアリサだって、ね。皆、わかってんのよ。
あたし達は魔物を無心で蹴散らしていったさ。
でも、魔法は使えなかった。ただでさえ酷い状態のこの城を、更に傷つけるわけにはいかない。
だってさぞ美しい城だったと思うよ。
それなのに傷だらけ、欠片ボロボロ落ちてるし、よくわからない落書きはあるし、気持ち悪い血肉付いてるし、よくわからない毛が落ちてる。
とてもじゃないね。オマケに変な臭い充満よ。
これ以上傷つけれないから。魔法は使えない。
皆無言だった。ときの声さえ誰もあげなかった。獣達の下品な叫び声ばっかり。
それに、すぐそこにあった王座への階段に、なぜか誰もすぐに向かおうと思わなかった。
ただ単にアリーナが向かおうとしなかったからだけど、彼女は何で向かおうとしなかったのか。
もしかしてこの暑く煮えたぎってる自分の中にあるマグマを、戦うことで冷やそうとしたのではないのか。冷やして冷静になってから、多分ここの王座に座ってるであろう敵の親玉をぶちのめそうと思ったのでは。大事な戦いで頭に血が上っちゃ、いい判断は出来ない。そんなもん、常識も常識だからね。
「アリーナ」
あたしは、暴れてるアリーナに声を掛けた。顔が火照ってて、やっぱりあたしの考え読めてるかも。
「あたしゃ、いつでもあんたの味方だよ」
小声であたしはそう言った。彼女は笑った。
バルザック・・・!今度こそ地獄の果ての果て、一生這い上がれないぐらいの果てまで送ってやろうじゃない!
「姫様っ!」
クリがアリーナを庇った。
「ぐっ!」
ヒャダルコ・・・あいつ!そんな技覚えてやがったのかい!油断も好きもないね!
「ベギラマ!」
あたしは炎の呪文を唱えた。といっても、メラ系統の炎の玉みたいじゃない。地を這う炎の魔法。
さっきアリーナが言ったんだ。この城の悪玉は強いに決まってるわ。階下みたいに魔法を使わないでちゃんと戦ってほしい。
そりゃ、多少まだ嫌悪感があったけど、それより憎しみのほうが強かった。
「バギ!」
ミネアも竜巻の呪文を唱えた。といってもミネアの場合、初期呪文。大したダメージは期待出来ないと思うけど。
「ベホイミ!」
アリサの魔法が、氷の呪文ヒャダルコで凍傷を負ったクリの傷を治していった。
「くっそ!」
アリーナが鉄の爪で攻撃しようと、バルザックに接近した。
「バイキルト!!」
「スカラ!」
後ろから爺さんの魔法が、アリーナへと向けられた。記憶からして、多分攻撃力増幅魔法。ただでさえ力強いアリーナの攻撃力が、これでグンとあがる!
それとスカラは防御力増幅魔法だ。クリが唱えたものだろう。ったく。一途なやつだ。
よし、アリーナ!いっけえ!
「きゃあっ!」
!!
なんて早さなの!
あの巨体のくせに、棍棒を振るう手が早すぎる。馬鹿力め・・・アリーナの速さでもだめだと言うの?
「エドガンの娘も落ちこぼれたものよのう。こんな奴らを仲間にするなぞ」
「あ、あんたには関係ないじゃない!」あたしが言う。「あんたなんか、あんたなんかギッタンギッタンにしてやるんだからね!ルカニ!」
これは防御減退魔法だ。水色の霧みたいなのがバルザックを囲む。
・・・でも、全くバルザックは動じてない。しかも迷惑そうに手を振ったらその霧が振り払われた!
「な、なんですかあれは・・・」クリが叫んだ。「ルカニが効かない、ヒャダルコもある。オマケに力強くて素早いなど・・・勝てるのですか、こんな・・・」
「クリフトよ」爺さんが言う。「絶望することこそ、開いてる道でさえ黒ずむ結果となってしまう。そんなことは考えるな」
「そうだ」ライアンが静かに言った。「今見た限り、気に隙など見えぬ。だが絶対あるはず。ずっと隙をなくしてることなど、誰にも出来やしない。たとえ進化の秘法とやらをしてもな」
「そもそもっ」とトルネコ。「進化の秘法なんて、存在しないものなのでしょ?ただ幻を見せてるのに過ぎやしないでしょうか」
「そうよ・・・」ミネアが拳を握って震わせてる。「あれは父さんが見つけて、この世に在るべきものではないと判断して始末しようと・・・。あいつは父さんを殺して盗んだのよ」
「ああ」あたしが頷く。「全く、血も涙もないね。人間でも魔物でもない。ただのでかぶつさ。くずさ。世界のくず!」
「そのくずのせいで」アリーナが呟いた。「この城はこんな酷いことになったわ・・・許せない」
「皆、気持ちはひとつでしょ?」アリサがトルネコから譲り受けた破邪の剣を手の中で転がしながら口の端をあげて笑う。この戦場の中で、アリサは余裕を見せた。
「その“くず”を倒すっていう、その気持ち。わたし達は負けてられない」
全員が1つになった。全員が頷いた。
改めて“くず”を凝視した。チロチロと舌を出して醜い姿をしてる。やっぱり“くず”だ。最悪最低。宇宙のちり以下の“くず”。
そいつが哄笑した。耳障りな笑い声が城中に響いた。あたし達は思わず顔をしかめたり、耳を塞いだりした。
「それは結構なことだ。だが、進化をしたわたしを誰も止めやせん!さあ、かかってくるがよい!勇敢な8人の戦士よ!」
そういうと“くず”は大きく息を吸った。同時に、アリサとライアンとアリーナとトルネコが奇襲をかけた。
「スクルト!」
クリがその背後で出陣した4人に防御増幅魔法をかける。さっきのスカラよりかは効果は減少してるけど、ないより数段マシ。これで棍棒を振るわれても大丈夫なはずだ。
でも甘かったね。あたしは“くず”が息を吸ったのは気合を入れるためだと思ってた。
「まずい!息じゃ!息を使いおる!」
「皆、顔の近くに行ってはだめ!顔が向いてるほうへ向かってはいけない!」
爺さんとミネアが悲痛な声を上げて、初めてわかった。
出陣した4人は、忠告に対し端的に返した。そして個人的に見る価値もない“くず”の顔を仰ぎ見ながら行動を続けた。
予想、大当たり。
あいつ、口から冷気発しやがった。氷の息だ。
でも、皆注意してただけあって、大丈夫だった。
アリサが、右腕。
ライアンが、左腕。
アリーナが、右足。
トルネコが、左足。
いつ相談したんだろう。とにかく抜群のチームワークだった。
その剣や爪は確実に当たった。確実に巨体が揺らいで、どす黒い青緑な液体が噴水のように出た。血・・・なのだろうか。異様過ぎた。
「ぐっ!」
“くず”が痛みを噛み締める声を一瞬だけ漏らして、体勢を立て直した。
「小癪(こしゃく)なっ」
アイツがこのパーティの中でも長身のライアンよりも大きな棍棒を振るった。
「ぐあっ!」
「ライアン!」アリーナが叫んだ。
そう・・・ライアンに命中した。でも、彼はあたし達を気遣ってくれた。
だって棍棒に当てられても、転がってった。転がって、“くず”から離れて、おれのことは構わないから早く倒してくれという風に。邪魔にならない所に移動したから、早く。右手から、ドラゴンキラーが転がった。右腕・・・変な方向に向いてる。ありゃ・・・骨折したっぽいぞ。
「ベホイミ!」
クリフトがライアンにすぐに呪文を唱えた。同時に、あたし達は彼の期待に答えた。
「メラミ!」
「ヒャダルコ!」
「バギ!」
あたしと爺さんとミネアの魔法がさっき揺らいだ巨体にぶつかる。
「たああああああああ!」
アリサが破邪の剣を構えて呪文を受けたばかりのバルザックへと走っていく。
ああ!棍棒が、アリサに当たる――
――すんでのところで避けたっ!
そしてさっき叩ききったのと同じところ、右腕をぶったたいた。
鈍い音を立てて、“くず”の棍棒と右腕が落ちた。
やった!多分、誰もが思った。これで、脅威なのはヒャダルコと氷の息だけ。
「ヒャダルコ!」
そらきたっ!
一気に冷気があたし達を襲った。冷たい・・・安らぎのローブを着てて良かった。なかったらいつもの露出してる格好だもんね。凍傷どころか凍死だな。あの慌てまくるクリ以上だよ、全く。
「ベホイミ!」「ベホイミ!」「ベホイミ!」
アリサとミネアとクリフトの体力回復魔法が、すぐさま唱えられる。あたし達の凍りついた体をすぐに癒した。
最初では想像できないほど凄いチームワークだった。ライアンだってつい最近仲間になったばかりなのに・・・やっぱり凄い。8つの光はまだまだかもしれないけど成長してるんだ。
あたしだってメラミが使えるようになったのもつい最近。いきなり頭の中に流れてきて、スライム相手に使ったっけ。森の中で燃え移っちゃって、爺さんに怒られながらヒャドで最小限に抑えてくれた。・・・思い出にふけってる場合じゃない。
「メラミ!」
“くず”の近くに誰もいないことを確認して、それから火球呪文を放つ。
“くず”の氷の息と命中して、酷いことに水蒸気が起こった。
うわあとかいうクリの声が聞こえたりもした。・・・やっぱりクリは気弱だと思う。
「バギ!」
いよっミネア!いい判断したね!竜巻呪文のバギが、水蒸気を巻き消していく。
小さな竜巻の後を、アリーナが追いかける。隙を突いて、バルザックを叩く気だ。
でも、これは竜巻が正しい方向に向かってないといけない。ミネアの腕を信じないわけではないけど・・・“くず”に向かってる竜巻なのかはわからない。
「ぎゃっ!」
悲痛な叫び声と共に鈍い音がした。それはバルザックの声だと、バルザックの左腕が落ちた音だと理解するのにそう時間は要らなかった。水蒸気はすぐに晴れた。
もはや、バルザックの周囲はどす黒い青緑の血飛沫であふれてる。力なく思わず見るだけで怖気づいてしまいそうな程気味が悪い両手が、所在無く落ちてる。“くず”の周囲の絨毯が炎が焼け焦げた後とか凍り付いて水が溜まってる場所とかある。背後の、多分アリーナのお父さんの玉座は、見るも無残な姿だった。
「おのれ・・・エドガンの娘とその仲間め・・・」
もはや喘ぐような声。人間の頃の声とは、とても似つかない。元々人間の頃の声も好きじゃなかったけどね。なんか気に障る声だったからさ。
「アリーナ、ミネア、マーニャ」
アリサの声が後ろでした。相手に背を向けてはいけないのだけど、あたしは思わず後ろを向いた。アリサが、破邪の剣を鞘へと戻してるところだった。
「最後は、3人で止めを刺したらどう?わたしはこのバルザックにそこまで憎しみを持ってない」
アリサがこの激戦の中で微笑んだ。あたしも思わず微笑み返した。
「そうだね。この際ぶちのめさせていただきますよっと!」
懐に仕込んでおいた鉄の扇を勢いよく開く。
「ミネア!アリーナ!最後に自棄のやんぱち!やってやろうじゃないか」
そういうとミネアもアリーナも、力強く頷いた。
「くそ・・・おのれ。わたしは究極の進化を遂げたはずなのに・・・」
「“くず”さんさぁ」あたしが溜め息をつきながら言う。「ばっかじゃない?進化の秘法なんて人の体に耐えられるものじゃないのよ。あんたはただの実験台。だからって魔物にいいってものじゃないけどね。進化の秘法は永遠に誰の手にも渡ってはいけないもの。わかる?あんた、化け物化してそんなこと考える知能もなくなった?」
「黙れ!愚かな!」
バルザックが首を振る。両手がなくなって体が不安定で倒れてやんの。地響きが起こった。ったく・・・この城の床が壊れちまうじゃないか!もう馬鹿な行動はよしてほしいものだね。
「エドガンは醜くちみっこい生物を全て従えることの出来る、配下に置くことのできる究極の術を闇に葬り去ろうとした。富も権力も手に入るはずのな。はっ、馬鹿よ哀れよ。金をそれに使いそれでおいて捨てるとは、何たる愚弄。ありえない考えとは思わないのか」
「思わないね」あたしが冷たく言い放つ。「人間は富を求めるものだけど、あたしは人を犠牲にしてまで、その上醜い姿はごめんだよ」
「お嬢さんはよくわかってないだけだ。生きるうえで何が必要か必要でないか。何が必然的なのか」
「馬鹿みたい」ミネアが馬鹿にするように息を吐きながら呟く。「馬鹿みたい。そんなの、人が考えてる考えじゃないわ」
「何を言っておる。そんじょそこらにいるではないか。手段を選ばず富を求めるものが」
「うっわー」アリーナが場違いに間の抜けた声を出した。「こんな姿になってほんっとわかってないんだぁ。さっきマーニャが言ったじゃない。あんたは実験台だってな。化け物とわたし達は語る気はない」
「わたしとて・・・理解できぬお前らとずっと話してる筋合いはない」
「じゃあ、これ以上口を開くなよ」
あたしの鉄の扇、ミネアの天罰の杖、アリーナの鉄の爪、
全部が交錯した。
あほな“くず”は城に転がったまま動けず。
断末魔をあげて絶滅し跡形もなく消えた。落ちた両腕も消えた。
でもどす黒い青緑の血の跡は残った。戦いが現実だったという印みたいだった。
あたしは泣いちまった。なんだかよくわからないけど。
まだ体が父さんのぬくもりを良く覚えてる。それを思い出してしまったのだろうか。こいつとの戦いで無意識に思い出してしまったのだろうか。二 度と握れないそのぬくもりをまだ求めてるんだろうか。
結局サントハイムの人々は戻らなかった。
「まあ・・・。今回は期待してなかったよ。あれが親玉じゃないわけだし」
アリーナが愁いを帯びた笑顔でそう言った。
「姫様・・・」クリがおずおずとアリーナの肩に手を置いた。「わたしは諦めてませんよ」
「わたしもだよ」アリーナが拳をつくってわなわなと振るわせた。「諦めてたまるもんか」
「いつか戻るじゃろう・・・。そう思わねばわしらが戦ってる意味がない」
「ミネア」あたしが妹を呼びかける。「バルザックもキングレオもあたし達は倒したけど・・・父さんが葬り損ねた進化の秘法。あたし達が代わって絶対葬りさろう!」
「ええ、もちろん。憎しみの炎が消えても使命の炎が消えたわけではないもの」
しばらく悲惨な姿になったサントハイムの城を見ていた3人にアリサがそっと声を掛ける。
「そろそろ・・・行く?」
その声にクリだけが振り返って、頷いた。
「行きましょう。ブライ様、姫様」
まだ未練がましそうに見てる2人を、クリが押していく。
外で待っていた白馬のパトリシアが、あたし達を見るなり急かすように足踏みをした。
ライアンやトルネコがすでにパトリシアの横に準備してる。
そうそう。ライアンの右腕、完治してないの。本当に見事に骨折してた。今は治癒呪文をやってもらってかなりマシになっただろうけど、完全に戻るわけではないのよね。
だからライアンが馬を引いても・・・。魔物が出たらどうすんのよ。右腕やられてるんだから剣なんて振るえないじゃないの。
「ライアン!あなたが馬を引いちゃ駄目だって。右が使えないんじゃ魔物相手にどうすんの」
「あー・・・大丈夫だ。うん。多分大丈夫だろう」
「なぁに言ってんだか。ほら、馬車組馬車組!ついでにアリーナとクリと爺さんも馬車で」
「ちょっとマーニャ!わたしは戦いたいわ!」
「だから何言ってんの!ダメダメ。アリサとトルネコとミネアとあたしが外組ね。はい決まり決まり!」
「姫様・・・ここは休ませてもらいましょう。暴れすぎではありませぬか」
「そうじゃぞ姫様。ここはサランの町まで。近隣なんじゃから・・・少しは聞き分けしてください」
「わたしなんてほとんど活躍してないようなものですからねぇ。ああ・・・なんだかお父さんの存在って大きいんだなと思いましたよ。ネネとポポロに悪い思いさせてるなぁ」
「そうか。トルネコ殿は所帯持ちでしたな」
「ええ。エンドールで、今は銀行をやってるそうで」
「こらこら。そこは思い出話しない!」
「お、思い出じゃないですよ!今も生きてます!立派に生きてます!」
「あーわかったわかった。わかったからライアンを馬車に入れるのを手伝ってくれ」
「だから大丈夫だっ。うわうわ、押すな押すな!・・・ああああ。あいあいわかったわかった。全く。マーニャ殿には逆らえないな・・・」
「あったり前でしょ!あたしを何だと思ってるの!」
「カジノで人のお金をスりまくる人でしょ」
「ちょっとミネア!それひどいんじゃない?」
「ひどくない。真実を述べてるだけよ」
「なんか前から思ってたけど、ミネアって結構酷いよね」
「世話がかかるものがいると、やはり言葉は荒くなるものじゃよ」
「そうですね。老師はアリーナで苦労なさってるんでしょう。だからそんなに髪の毛が」
「あーあー!皆まで言うでない!自覚しとるわい!やっぱりそなた、酷いな」
「そうでしょうか?」
「はいはいはいはい!そこまで!」
口々に会話していた皆が、アリサの制止の声で止まった。
「とりあえず今は皆ボロボロなんだから。のんびりするのはサランの町!それまでキリキリ歩く!」
アリサが一番に馬を引いた。パトリシアが嘶(いなな)いて馬車がゆっくりと。
「あで!ちょっと待ってくだされ!」
片足だけ乗せて片足が地面にあったらライアンが冗談めいた苦痛をあげた。皆、笑った。
そう。まだ、あたし達の旅は終わってない。立ち止まってる場合ではないんだ。
夕日(サランの町)に向かって・・・今はとりあえず止まってはいけない。
これはマーニャ視点の作品です。いかがでしたでしょうか?
色々試行錯誤考えるクリフトと違い、マーニャは単純で(本人の前で言ったらメラゾーマぶっ放されそうですが)書いててとても楽しかったです。
こう、悪口が潔く言える、マーニャだと。クリフトは賢いから色々考えちゃう。だからってマーニャが馬鹿ってわけじゃないですよ。
最後のほうはやっぱり戦いが終わった後の安堵感が否めません。いいよね、こういうの。ほっとする瞬間。
ちなみにバルザックは本当はそんなに早くないですよ。ただ、強敵としてもう少し目立たせたかったのかな。
だからといってバルザック好きなわけではない。ご安心を。